理事長メッセージ

介護を考える

淳涌界のおふくろの家がスタートして4カ月がたちました。
60床の入所がそろそろ満床になります。あいち診療会は
「受け手になった時に安心できる医療システムの構築」を目標に掲げて活動してきました。
在宅医療制度も、法人設立当初と比べると隔世の感があり、量的には全国どこに行っても在宅医療が受けられそうな状況になりました。
ところで、現在の特別養護老人ホームは、「受け手になった時に安心できる」ものでしょうか。
私たちが今後高齢者も減少し始める今の時期に、おふくろの家を開設し、運営していくことにしたのは、現在の施設サービスが自分が受け手になった時に安心できるものではないと考えるからです。
おふくろの家は、「親を入れて面倒を看てもらう施設」ではなく、「自分が入って面倒を看てもらう施設」です。

①本人の意思を大切にする介護を
最近の裁判で誤嚥による死亡事故で2900万円の損害賠償
転倒事故で480万円の損害賠償という判例があります。

この判例に危機感を覚えませんか。
「入居者が誤嚥したり、転倒したりするのは施設の責任」ということです。
高齢者の誤嚥、転倒は施設でなくても日常茶飯事です。
認知症の方が鉄道にひかれ、家族がその損害賠償を請求されたということもありました。
施設の責任ということであれば、施設はそれを未然に防がなくてはなりません。

お茶を飲んでむせた。
何かの拍子に気管に米粒が入って咳こんだ。
そんな経験をしたことはありませんか。
事故を未然に防ぐ一番確実で拙劣なことは危ないことを禁止することです。
食べさせない、歩かせない
そうすれば誤嚥も転倒もリスクが低くなります。
おふくろの家に3年間車椅子生活だった方が入所されました。
3年前に転倒して大腿骨頚部骨折を起こし、施設で車いす移動を強いられてきたのです。
今何とか手引きで歩行ができるようになりましたが、そんなことがいろいろな施設で当たり前になりつつあります。
しかし、施設だけを責めるわけにはいかないと思います。

私たちは
甘いものが食べたい
酒が飲みたい
タバコが吸いたい
歌がうたいたい
そんな本人の意思を尊重したいと思います。

たばこが健康に悪いことは百も承知、健康に悪いからと禁止していいのでしょうか。
私は法律でたばこを禁止するのであれば賛成します、しかし高齢者、施設入所者には禁止するというのは理にかなわないと思いませんか。もちろん受動喫煙の害は防がなければなりませんが・・・



家族の肩代わりの介護からセルフケアに勝る介護へ
介護保険が始まる時に「介護の社会化」ということが言われました。家族の介護負担を社会全体で引き受けるという意味です。しかし介護が家族介護の肩代わりである限り介護職の地位の向上は望めません。
家族が要介護状態になった時、介護する家族は介護経験もなく全くの素人です。その素人の介護の肩代わりであれば難しいことではありません。
私たちは、生まれてから成長する中で様々なセルフケア能力を身に着けて一人前の大人になります。食べること、歩くこと、衣類の着脱、排せつの自立などが出来るようになると、次には家庭の中で役割を担うようになり、社会人として社会的な役割も担うようになります。そのセルフケアがうまくできなくなった時に介護を必要とするのです。
そこで求められる介護は、セルフケアに代わる介護です。
皆さんは美容院(理容院)に行って髪をカットしたり整えたりすると高い料金を払います。それは自分でやるよりも気持ちよく、而も出来栄えがいいからではありませんか。
入浴の仕方も人によって様々です。それは入浴によって得られる満足感が様々だからだと思います。今の入浴介護はその人の入浴に勝る技術を獲得しているのでしょうか。
障害が無くても受けたくなる入浴洗躰サービスだったら高い料金が請求できるでしょう。
これから求められるのはセルフケアに勝る介護なのです。

こんな介護をしてみたいと思いませんか
やる気のある方は歓迎します。

介護の担い手は誰か
高齢化が進み、健康寿命という言葉をよく耳にするようになりました。人の介護を受けないで生きられる年齢ということだそうです。
健康寿命と寿命との差が10年あると言います。平均10年近く人の世話になって生きるということです。とんでもない話ですね。
介護予防という言葉もよくつかわれます。介護を受けなくて済むようにということです。
生活不活発病という言葉はご存知でしょうか。
体に不自由を生じると活動性が低下しやすく、活動しないことでさらに体が不自由になるという悪循環が続き最後には要介護状態になってしまうというものです。
実は生活不活発病のきっかけの多くがすることが無い、行くところが無いということであったりします。定年後の生活設計が無いまま時間が過ぎていくとそういう状態になってしまいます。人との会話が2-3日に1回程度しかない独居高齢者が半数近くいるという調査結果があります。その人たちには生活不活発病が始まっていると言えるでしょう。
高齢者の8割は健常者であり充分に仕事に耐える人々です。会社など自分の住んでいる地域とかけ離れた世界にしか人間関係の無い方がそのリスクを抱えています。
私たちはその人たちこそ地元で社会参加の場を求める必要があると考えます。様々な参加の仕方がありますが、長い人生経験を積んだ方の介護の仕事には、長い人生経験を積んでいるからこそ発揮できる能力も求められます。
あいち診療会では定年後の社会参加の形として介護を選択する方を求めています。
「まだ5年は動けるぞ」という方に週3日ほど働いてもらうのが理想です。他の曜日は別の地域参加の時間にあてていただきたいのです。
野並日本一の会も社会参加の機会づくりの試みをしているので、あいち診療会も応援しています。

 

 

理事長あいさつ 2017年1月

今年は、社会福祉法人淳涌界のおふくろの家が3月に立ち上がります。
在宅医療で介護負担が増え、家にいられなくなる方が後を絶ちません。
私たちは、家族の皆さんが、病気のこと、特に認知症に対する理解を深め、ちょっとした対応方法を習得すれば介護が楽になることを知っています。
おふくろの家は特別養護老人ホームですが、入ったら入りっぱなしの施設ではなく、在宅医療の継続を助けることが出来るものにしたいと考えています。
私たちの目指しているのは「家族を預かってもらう」施設ではなく、自分が入りたい施設です。様々な困難が予想されますがそれを乗り越えることを楽しみにしています。

高齢者の二人世帯や、独居の高齢者が増える中、在宅医療が医療保険と介護保険だけでは成立しないことが明確になってきています。介護力に乏しくても地域で暮らし続けるためには、地域の人との助け合いが必要です。それを可能にするのは地域の人同士の繋がりです。3年前から介護カフェをスタートし、昨年から健康カフェも始めた野並日本一の会の活動は私たちの地域をそのような地域にして行こうという活動であり、あいち診療会は全面的に応援していきます。皆さんも小さなことでいいので何か地域と繋がることに取り組んで頂けたら幸いです。

2017年1月

あいち診療会理事長 畑恒土

 

 

 

理事長あいさつ 2014年6月

私達は法人設立以来「受け手になった時に安心できる医療システムの構築」と言う目標を掲げて、今求められている医療とは何かを考え、それを実践することでその目標に近づこうとしてきました。

法人設立当初に私たちが掲げた在宅医療の条件は

「本人が家に居たいと希望する」
「家族が家で看てあげたいと希望する」

この2点でした。そしてこの条件を満たした方に対して、良い状態を作ることは私たち医療者の責任であると訴えてきました。この条件が満足された時在宅医療は間違いなく病院などでの医療より満足度の高いものになることは今でも間違いではありません。

しかし社会状況の変化により、在宅医療の選択理由が2極化してきました。よりQOL(生活の質)が高い医療として前向きに選択する方がいる一方、他に選択肢がなくて仕方なく選択する方も増加しているのです。さらに家族の介護を受けられない(受けたくない)高齢者も増加しています。

地域包括ケアの考え方はこのような時代の流れの中で行政から声高に叫ばれるようになりました。医療保険、介護保険等の公的なサービス(共助というそうです)だけでは家族のいない方を在宅で看取ることは困難なことが明らかになり、それを可能にするのが地域包括ケアだというのです。しかしその実態はいまだにみえていません。厚生労働省の思惑はともかくとして、私たちが受け手になった時に自由に、自分の生活の仕方を決めていくためにも地域包括ケアの実現が望まれます。厚生労働省は地域包括ケアの実現は地方自治体の責任であるとしていますが、地域包括ケアの本質は自助、互助にあります。

つまり自分の健康な生活は自分で守ること、住民がお互い助け合って守るということが前提になっています。どうしたらそれが実現できるかの提示はされていません。

私達は今年より「野並を日本で一番在宅医療が受けやすい地域にする。」ことを目標に設定しました。この目標を達成するためには地域の人々が持てる力を、地域の人が住みやすくなるように発揮し合わなくてはなりません。私達は、この地域が少しでも多くの人が人の役に立つ喜びを共有できる地域になることを願っています。私たちはそのために出来ることから取り組みたいと思います。

一方、私達が一人一人の命を大切にし、少しでも多くの人が臨終のときまで健康でい続けることができるように努力している同じときに、地球のどこかで飢えのために命を落とす人々がいて、国と国との争いで命を落とす人々がいます。

採算性を上げるために安全を軽視した事業展開により多くの人命が失われるという事件も繰り返されています。

私たちは地域包括ケアを実現する小さな地域単位である野並を活動の場として設定し、地域のことを知り、地域のために何ができるかを考え続けます。

それと同時に地球全体の将来のことも脳裏に描けるような心と視野を持ち続けたいと願っています。」

 

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